U18クリエイティブキャンプ2018のご報告

●はじめに

 

7月28日㊏~31日㊋、子どもデザイン教室で受講する高校生3人は公募事業「U18クリエイティブキャンプ2018」において、秋田県里親連合会、感恩講児童保育院と協同して、「秋田県の里親をもっと知ってもらうためのゆるキャラシンボルマーク」を作りに秋田へ行ってきました。

 

出来た里親啓発マークは、秋田県のものなら何にでも無料でお使い頂けます。なぜ、その必要があるのか?それは、秋田県の里親委託率が都道府県別で最下位だからです。そこで、この里親啓発マークを作ろうとこの高校生たちは考えました。

 

里親啓発マークを普及させることで、里親の認知度を高め、1人でも多くの子どもが家庭的な環境で暮らせるようにしたいと企画しました。どんな人たちと出会い、どんなクリエイティブが生まれ、どれくらい高校生たちは成長するのか? とても楽しみなコンテストでした。

 

●1日目

 

秋田は緑が深く、空は広く、空気もきれいです。秋田到着後、早速に東北地区里親研修会会場で全国里親会副会長の津崎哲郎さんの講演を拝聴しました。日本には家庭を改善する仕組みがないのに家族の再統合をする、そこが暴力の連鎖に繋がっているという話が印象に残りました。

 

その後、秋田公立美術大学で交流会に参加しました。東京、長野から参加のコンテスト他団体は爽やかでとても元気な高校生で、すぐに仲良くしてくださいました。夜はきりたんぽ鍋を頂きながら、楽しい時間を過ごしました。

 

今回制作する里親啓発マークは親と暮らせない子どもたちとレッスン形式で作ります。夜は遅くまでその練習をしました。2時間で必ずマークを作らないといけません。途中、メンバーが誕生日ということを知り、皆でお祝いの歌を歌い、目まぐるしい1日目は夢の中に溶けていきました。

 

●2日目

 

秋田温泉さとみで開催の「東北地区里親研修会」に参加の子どもたちと、いよいよ「里親啓ゆるキャラシンボルマーク」を作りました。子どもたちはとても親しみやすく接してくれました。なかでも高校3年生の男の子が場の雰囲気を盛り上げてくれ、とても助かりました。

 

キャラクターの一つはサトゴン。空に住んでいる1000歳の子ども好きの恐竜です。酷いことをするおとなが嫌いで、最近幸せになれない子が多いことが悩み、身長10m、捨てられた子を身体の中に住まわせています。当事者ならではアイデアが生まれました。

 

お昼からは児童養護施設「感恩講児童乳児院」へお伺いし、2回目のレッスンをしました。森に囲まれた素敵な施設でした。大阪市内の施設とは環境がかなり違います。新しくなって4年目、木の香りが素敵でした。こちらは高学年が多く、完成度の高いキャラクターが多く出来ました。

 

レッスンをする私たちの高校生は1年生です。レッスンが終わり、受講した高校3年生の子が「1年生なのに凄い」と感心していました。振り返りの中でも、「優しくしてくれた」と好評や感謝のメッセージが沢山寄せられました。頑張った甲斐がありました。

 

今回コンテストに参加して、高校生たちが次第に成長しています。今、何をすべきか? を自ら考え、コミュニケーションに難のある子も自ら声かけができるようになり、ミーティングでも発言できています。レッスンが驚くようにスムーズに進むので、見学のおとなの方が驚いていました。

 

夜のオフは自分たちで調べた「市場のお寿司やさん」へ。回転寿司とはいえ、大阪とは違うネタの新鮮さと大きさにご満悦の高校生でした。明日からは、マーク完成や発表に向けて、ハードな内部作業が始まります。

 

 ●3日目

 

今回のクリエイティブキャンプでの不安は、最終日に企画したマスコミへの記者発表会です。実はこの企画、その発表会を開催して、秋田に「里親啓発のゆるキャラシンボルマーク」を託して帰る、というのが目的でした。

 

しかし、大阪を立つ前に「発表会にご出席ください」とプレスリリースを秋田のマスコミ各社に送ったのですが、何のお返事もありませんでした。これでは発表会参加者0人の危険性があります。受取手がいなければ、企画自体の意味がなく、ただの自己満足で終わります。

 

どうすべきか?昨夜から打ち合わせを続けましたが、良い案が浮かびません。そこで急遽、作戦変更です。それは、里親啓発を一番望んでいる所「児童相談所」にアプローチし、この里親啓発マークを使って頂こうというものです。しかし、何のつてもありません。

 

そこで、昨日、レッスンを開催した感恩講児童乳児院お伺いし、児童相談所の里親ご担当者をご紹介頂こうとお願いに行くことにしました。高校生たちは「どう喋ろうか」と、行くときはもうドキドキでした。緊張の中、自分たちの企画意図を院長先生に説明しました。

 

すると、どうでしょう!「秋田県の里親委託率を上げるにはそんなシンボルが必要だ」と秋田県庁のご担当者をご紹介くださることになりました!実は昨夜の打合せで、高校生の一人が「県庁に行けば良い」と言っていたのですが、迂闊な私は相手の大きさにその話をスルーしていたのです。

 

高校生たちは凄いです。細い糸を辿って、秋田県庁の地域家庭福祉課のご担当者さんに「里親啓発のゆるキャラシンボルマークを使ってください!」とお話し、面談のご担当者さんはご寛容な態度で子どもたちの話を聞いてくださり、また、広報のお力添えもお約束くださいました。

 

秋田に来るまで「あまり秋田の人と接する機会がないのでは?」と不安に思っていました。しかし、里親会や子どもたち、県会議員、運営のNPO、大学生、児童養護施設と子どもたち、秋田県庁、多くの皆さんが突然大阪からやって来た高校生の無理難題にご尽力くださいました。

 

その後、発表会に向けて、子どもたちが作った19作品の中から3作品への選定作業、下書きをPCで作品化する作業、背景の壁紙作り、投票用紙や配付ちらし、パワーポイントの制作と夜遅くまで準備作業をしました。いよいよ明日が本番、これまでの成果が問われます。

 

例え発表会に誰一人来なくても、この秋田で経験した皆さんの優しさや絆、そして、自分たちの成長を、感謝の気持ちを込めて発表したいと思いました。このコンペに参加出来て本当に良かったと思いました。作業を終え、夜遅く、空きっ腹に食べた焼き鳥が殊の外おいしく感じました。

 

 ●4日目

 

クリエイティブキャンプ最終日。親と暮らせない子どもたちと作った「里親啓発ゆるキャラシンボルマーク」の選定会と発表会の日です。事前のプレスリリースには無反応。来場者0人の前で発表するのかと残念な気持ちと、誰か来てくれないかな~とドキドキもしていました。

 

午前中に予定していた選定会は予想通りの0人。私は県庁への提出が出来るので、それでも良いか思っていたら、突然、1人の高校生が「こんなんあかん!」と外へ走り出しました。そして、学食で大声で呼びかけをしたかと思うと、手当たり次第に学生さんらに声かけを始めました!

 

子どもは不思議です。礼儀を教えたり、やきもきしたりする場面があるかと思うと、スイッチが入るとやたら輝き出します。対話に難のある子も気づいたらしい声かけをしていました。若い力のひたむきさを教えられました。

 

そして迎えた発表会。子どもたちには感謝の気持ちを発表しようと言いました。聴取はスタッフを除いて何と25人!さらに朝日新聞と秋田魁新聞の方が取材に来てくださいました!発表会はそれまでの悶々を吹き飛ばすように、今回の意図やゴール、経緯と結果をしっかり伝えました。

 

最後は大きな拍手を頂きました。細い糸を繋ぎ合わせたこの4日間を思い返すと、じんわりしました。今回、教育とはやはり待つこと、と認識しました。教え手がやきもきしている時にこそ子どもは成長します。

 

高校生たちは「里親啓発ゆるキャラシンボルマーク」を秋田県の里子さん、施設で暮らす子どもたちと作り、秋田の人々のご縁を辿って関係各所と交渉し、秋田県庁の里親啓発担当課にそれをお渡しするという結果を残しました。そして25人の参加者と新聞2社を前に発表会もしました。

 

「秋田県の里親委託率を改善し、子どもが暖かい家庭で暮らせるようにしたい」という企画を思いついたとき、秋田県に何もつてもありませんでした。それからご縁を辿りに辿って、交渉に交渉を重ねて、その里親啓発マークを秋田県に託して帰ることができました。

 

●おわりに

 

子どもたちは少しおとなになりました。私も多くを学びました。偶然に偶然が重なって、見事に結果を残すことが出来ました。たくさんの秋田の方々に出会え、たくさんのお力添えを頂きました。感謝しかありません。

 

この子たちは凄いことをしたと思います。都道府県別で里親委託率最下位の秋田県は、この子たちがいなければ、そんな里親啓発のマークさえなかったのです。偶然が出会いを生み、繋がって形になりました。

 

この「里親啓発ゆるキャラシンボルマーク」が誰かの目にとまり、誰かが里親のことを知り、一人でも多くの子どもが暖かい家庭で暮らせるよう、この里親啓発マークが里親を広める活動に使われることを願っています。