子どもデザイン教室ブログ
オリンピックのエンブレムの類似問題
takorockな毎日 | 2015.09.02(水) | No Comments
●選んだ方の責任
児童養護施設の子どもたちが描いたマスコットキャラクターの選考委員をしています。応募作品は後で企業のマスコットキャラクターになります。東京オリンピックのエンブレムの類似問題が影響してか、自然と審査に念が入ります。
子どもは無邪気ですから、人気アニメのキャラも平気で真似します。中には一部だけ描き換える強者もいますので、子どもだからと気楽に選んでしまうと、後で取り返しのつかないことになります。東京オリンピックのエンブレムの選考も同じだと思います。
こうして選考委員という同じ立場に立つと、エンブレムは随分杜撰に選ばれた印象です。私の場合、他のマスコットと似たものは選から外しましたし、グーグルの画像検索で類似がないか調べています。それ位すぐできるし、今後さらに調査して貰う予定です。
エンブレムは選考案を決めてから後で類似案がないか調べたそうです。しかし、類似案が見つかった時点で、どうして失格にならなかったのでしょう。その時点で次点案を選ぶべきです。それとも選考案にしなければいけない何か理由があったのでしょうか?
●出した方の責任
案を出した方も、生涯の集大成というなら、出す前に、類似がないか自分で調べなかったのでしょうか。サントリーのトートバッグでは、ありえないことに、人の商品を勝手に写し、自分の名を冠したデザイン案にしてお商売をしていました。
学生に「トレスはダメだよ」とも言えません。グラフィックデザインへの不信感が広がっています。盗作はないことを願っていますが、本当にそうなのか、HPでこっそり詫びないで、制作過程を見せるなりして真実を証明した方がいいと思います。
エンブレム自体は(私の趣向ではありませんが)視認性の高いデザインだと思います。デザインは「技術」ですから「芸術」と違って誰が作ろうが、基本的に作家性は関係ありません。技術的に機能すればそれが優れたデザインです。
また、このエンブレムはオリジナルと信じています。その理由は、基本的な形(オリンピックは正方形を意識、ベルギーは丸)と色(オリンピックは4色、ベルギーは1色)が違うからです。形と色はデザインの3大表現のうちの2つです。
ただ、業界のトッププロたちがグラフィックデザインの信頼を著しく損ねているこの問題。これから5年以上もこのエンブレムを見せられるのかと思うと、もうすでに「あまり見たくないな」というのが、私の正直な心象でした。
中止になってホッとしています。