子どもデザイン教室ブログ

児童虐待防止学会で思うこと

デザイン基金 | 2019.12.23(月) | No Comments

昨年11月にファミリーホームを開設して以来始めて支援スタッフが宿泊してくれるので、自宅で寝ようとお休みを貰った。そして向かった児童虐待防止学会の目的は、子どもデザイン教室を題材にした「子どもの意志表明に繋ぐセルフアドボカシー支援」の学会発表に参加することだ。

大阪府立大学の伊藤先生、今宮工科高校の井上先生、藤井寺支援学校の藤井先生が半年以上かけた研究発表だ。発表の内容は、子どもの「言ったこと」と「言いたいこと」は違う。そこで、その言葉を摺り合わせることで価値感を共有し、子どもの意志表明に繋げようという試みだ。

例えば、子どもが何かをして「ごめんなさい」と言ったとする。おとなはそれを反省と捉えるが、実は子どもは「もうこれ以上怒られたくない」から言っていることがある。それではまた問題が起こる。そこで、この言葉の違う意味を摺り合わせる必要がある。

その言葉の摺り合わせ方をメソッド化したのが今回の発表の内容だ。小・中・高と12年間も習う国語の機能を生かして、カウンセラーのように専門的な勉強をしなくても日常の語り合いの中で言葉を摺り合わせる方法を発表された。

その方法論とは「どういうこと?」と「どっち?」の答えを引き出す言い換えと「なぜ?」を繰り返し、例えば、暴力的な言動や回避的な言動の下にある言語化できない感覚・感情を知覚化し、共感する。つまり、言葉を合わせることで価値観を共有する対話法だ。

私自身、この方法をファミリーホームで何度も実践している。そのメリットは、無駄な感情の起伏がなく子どもの価値観が理解できること。そして、問題解決のための環境を整理できることである。この方法を社会に普及して多くの里親や施設職員が普段の関わりに使ってほしいと願う。

今回、子どもの意見表明を話題にした講演が多かった。私自身、里親をしていても思うが、子どもの声を聞くのは本当に本当に難しい。子どもは養育者だと言いたいことは言わないし、おとなも自分の実子ではないから言いたいことが言えない。

子どもは食ってかかることもあるし、逃避することもある。しかし、そんな上っ面を捉えているとその子が本当の考えは見えてこない。また、子ども自身が自分の気持ちを分かっていない場合がある。何をどうしてほしいのか?嫌がられても根気よく何度も対話を重ねる必要がある。

一方で社会的養護児童にアンケートをとると「子どもの声は聞いてくれるが、子どもの意見は聞いてくれない」という意見が多いそうだ。なるほど、と頷く。しかし例えば、アルバイトがしたくてもその子がもし大学受験をめざすなら、禁止や制限を加えるのが親心だろう。

アルバイトがしたいならその子の生涯賃金など考えず、その意見を尊重するのが子どものアドボカシーなのだろうか。子どもの権利と親心はどちらが優先されるのだろう。私は実子の将来を思って数多くの制限や禁止を加えて育ててきた。しかし、それが現在の実子の幸福に結実している。

実子なら将来を慮って制限できることを、社会的養護の子は自由にさせていいのだろうか。それは、その子の将来を本気で考えているのだろうか。里親は「親代わり」なのだから、固有する独自の家庭環境で育てているが、悲しいかな里親と里子は急ごしらえの「張りぼて親子」である。

しかし、そもそも親子とは、固有する文化的資産を継承するのがその社会的機能である。里親は福祉機関の一機能、「親」でなくただの「里(お宿)」なんだろうか。そんなことを考えていると何だか虚しくなってきた。せっかくのお休みなのに冷たい雨が降り、テンションは低め。

子どもたちのことが気になって、ドーナツを買って、結局自宅に帰らずホームに帰った。すると高校生の子がしきりに今日買ってきた服を自慢して見せてくれた。涙が出るくらい暖かかった。張りぼて親子にも魂を入れる方法はある。

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